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パナの新型テレビ、その ”先” に潜む重大な懸念点

三行まとめ

パナソニックの新型テレビ。TV放送番組とインターネットのサイトなどが一つの画面に一緒に表示されるのは、視聴者が番組とネット情報を混同しないよう定めた業界技術ルール違反と民放各局が抗議。

・商品案内を見たところ、ちゃんと配慮して作られてて、とても混同しそうには無い。

・でも考えると、その先に待ち受けてるものは結構めんどくさそう。

 

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今回のニュース

テレビの電源を入れると、放送番組とインターネットのサイトなどが画面に一緒に表示されるのは、関係業界で定めた技術ルールに違反するとして、民放各局がパナソニックの新型テレビのCM放映を拒否していることが6日、分かった。大手広告主のCMを各局が流さないのは極めて異例。

 

 放送関係者らによると、問題のテレビは4月発売の「スマートビエラ」シリーズ。テレビをつけると、放送中の番組の下と右にサイトやネット動画などが並び、リモコン操作で簡単にアクセスできるようにする機能がある。

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  パナの新型テレビCM拒否 技術ルール違反と民放 - 47NEWS(よんななニュース)

 

 

何が問題となるのか?

テレビ視聴者に、テレビ局が配信してない情報まで番組の公式サブコンテンツと誤解されるのはマズイよね、とテレビ局は考えています。

「テレビにはテレビ局からの番組のみが映る」「テレビの電源付けたらそれまで見てたチャンネルが表示される」という数十年に渡る固定概念 が、マルチウィンドウ前提という一般認識がある PC とは異なり注意しないといけないところですね。

この誤認識を防止するためのガイドラインを業界で策定しています。 

テレビの視聴形態には、パソコンなどの利用と違い、大きく 2つの特徴がある。

① 利用者層が非常に広い

テレビは、ほぼ全ての世帯に普及しており、老若男女を問わず利用されている。サービスは、主として総合編成を基本としており、幅広い利用者を対象としている。 

② 受動的な視聴形態・ながら視聴

テレビは、大半の時間において受動的にリラックスして視聴されている。この場合、視聴者はテレビからの情報を信頼して視聴している。 

これらの特徴から、放送事業者は対象とする視聴者層を幅広く想定し、リラックスした状態でも誤解されることが無いよう、画面構成や番組構成などの演出に配慮している。

・ 視聴者から見るとインターネットブラウザと放送画面とが一体のように見えるため、視聴者は放送番組と関係のない地域情報も、放送局が提供した情報であると誤解してしまう可能性がある。

つまり例 Aと例 B-1の画面は多少の違いがあるものの、一見したところでは同じような演出手法によるものだと受け止められて、HTMLコンテンツの情報に関しても放送局からの情報であるかのように受け止められてしまう可能性がある。

・ このとき、放送局は自局が提供していない地域情報が番組と一体化されて提示されることを想定していない。また、そのように提示されていることすら気付かない。

・ このようなケースを「番組の一意性が確保されていない」という。このような表示は避けるべきである。

   放送番組及びコンテンツ一意性の確保に関するガイドライン(PDF) より抜粋

 

• 放送番組及びコンテンツの提示中に、それと全く関係がないコンテンツ等を意図的に混合、または混在提示しないこと。例えば、提示中の放送番組の表示にその番組と全く関係が無いコンテンツや告知、広告を混合提示し、意図的にそのコンテンツや告知、広告が放送番組と一体であるかの様な誤解を視聴者に与える提示を行う機能がこれにあたり、テレビ放送画面とインターネットのブラウザ画面が一体であるかのように視聴者に誤解させるような機能を装備することなどを指す。なお、受信機の機能として、上記の様な誤解を与える事を目的とせず、ユーザーの操作により複数のコンテンツを一画面に同時提示する事、例えば 2画面表示、小画面表示機能はこれにあたらない。

  TR-B14 第二編 9.3章 抜粋

 

こういう表示なら誤解の余地が無いので良い模様。まあ分かりやすいですね。

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  放送番組及びコンテンツ一意性の確保に関するガイドラインより抜粋

 

 

で、今回のパナソニックの新型テレビは実際にどうなんでしょ?

http://panasonic.jp/viera/products/ft60/index.html

公式サイトの商品説明を見る限り、視聴者が誤認識しないようにする良心的な配慮は十分に図られているものと見受けられます。番組連動機能も充実してたり、音声認識機能付きリモコンなども面白そうですね。

ただ、ガイドラインには引っかかってるので、テレビ局側としては恣意的な判断で OKは出せない、というところでしょう。

ちなみに、パナソニックと各テレビ局は以前からこの問題点を認識して事前協議していたとのことです。その上で、折り合いが付かないままパナソニックが発売を押し切った。これが何を意味するのか? 想像するに興味深いです。

 

 

今後についての懸念

最初に上げたコラ画像。あれは分かりやすく刺激的に作ったものです。いくらなんでも、こんなにあからさまにはやらないでしょう。けど、同じことをもっと狡猾にずる賢くグレーゾーンで実施することは普通に考えられますよね。

基本的には、テレビ機器メーカーの良心に期待して委ねていれば、そう酷いことにはならないでしょう。多分きっと。しかし、今後「放送と通信の連携」というテーマで Web 業界との密接なビジネス連携の過程において、経営的に追い詰められた端末メーカーの良心回路が緩むかもしれない、そういうことも想定の必要があるのではないでしょうか。お金持ってる Web 系企業との連携を思い浮かべて見てください。Google とか、Amazon とか、楽天とか、TUTAYAとか、グリー・モバゲーとか。その先に待ち受けるのは一体どんな未来でしょうね?

業界ガイドラインは、新規参入者のハードル上げと既得権益の固定化という意味合いも否めないのでしょうけど、いわゆる「情報弱者」である一般利用者を保護する役割を担ってもいるでしょう。やったもん勝ちの野放図な焼畑農業的製品が出るのは喰い止めないと、業界自体が疲弊して衰退してしまいます。

インターネットリテラシーの高いユーザが事前説明を受けて、利点と危険性を全部納得ずくの上で購入して利用するなら良いのでしょうけど、そうとも限りませんよね?

ラーメン屋にふらっと入って、馴染みの NHK キャスターがテレビでなんかしゃべってる画面を丼すすりつつ脇目でふっと見て・・・そこに変な情報がしれっと混ざってたとしたらと思うと、ぞっとしない話ではあります。

新しい便利な技術は、だいたい諸刃の剣です。使い方は利害関係者一同で慎重に議論して、やって良いラインと駄目なラインの線は引っ張って置くべきだと思います。なんだかんだで放送の情報影響力って公共性があるがゆえに強く、それゆえに各種の免許やら公的機関の管理やら業界自主規制やらでガチガチに縛られてる領域ではありますので、うまいこと発展的な方向で進めていって頂きたいところです。

 

 

おまけ、ぼくのかんがえたすごいもうかるてれび

・利用者がいつどの番組を見ているのかの行動履歴をネットで提供する代わりに通常小売価格の半額で買うことができるテレビ。(フロントカメラで顔認証して、家族ごとに識別する。CM 時にちゃんとテレビの前にいるとポイントが溜まっていく)

・サイドパネルに、視聴履歴に連動したアフィリエイト商品広告がずらり。

・ツイッターと連動したテレビショッピング番組で、商品情報に好意的なツイートのみを抽出して表示。

・どっか適当にクリックするとアダルトサイトに飛んで勝手に有料会員登録完了。